ディズニー/ピクサー映画『2分の1の魔法』はイアンの視点から見たバーリーの物語だった

2020年8月21日にようやく公開された、ディズニー/ピクサー映画『2分の1の魔法』。
コロナの影響で実に当初の公開予定日から5ヶ月遅れで公開された、ディズニー/ピクサー作成の新作映画です。
個人的にはあんまり興味なかったんですけど、主人公イアンの声をトム・ホランドがやっているということで先日ようやく見に行きました。
感想ブログ書きたいと思うくらいには内容が良かったので書いていくね
以下ネタバレ気にしません。
ちなみに原題は『ONWARD』です。こっちの方が好きなので以下作品表記こっちにします。
あらすじ
公式HP引用
はるか昔、世界は魔法に満ちていたが、時の流れと共に魔法は忘れられていった。
そんな “魔法が消えかけた”世界に暮らす少年イアンは、自分に自信が持てず、 何をやっても上手くいかないことばかり。そんな彼の叶わぬ願いは、生まれる前に亡くなった父に会う事。
16歳の誕生日プレゼントに、父が母に託した魔法の杖を贈られたイアンだったが、魔法に失敗して “半分”だけの姿で父を復活させてしまう!
魔法オタクで陽気な兄バーリーの助けを借りて、イアンは父を完全に蘇らせる魔法を探す旅に出るが、彼らに残された時間は、あと24時間しかなかった…。
『ONWARD』はイアンの視点から見たバーリーの物語だった
本題。
主人公はイアンだし、魔法を使えるのもイアンだけ。
イアンは生まれる前に亡くなった父親に一目会うため、兄のバーリーと一緒に、下半身だけしか復活させることが出来なかった父を完全に復活させるため、魔法を使うのに必要な不死鳥の石を探す旅に出る。
気弱で自分に自信がないイアンが、冒険や魔法を通して自分の世界を広げていき、最終的にはハリー・ポッターもびっくりの魔法合戦を行うまでに成長する。
見ている方としてはもちろんイアンの感情移入して物語に没頭するけど、それだと本作のエンディングでは少し切なさや、ほろ苦さが残るようになっている。
ラストのネタバレをすると、結局イアンは完全復活した父親に会うことは叶わない。
不死鳥の石を遺跡から取り外したことにより現れた、石を守護するドラゴンと戦った結果、ドラゴンを倒すことは出来たけど、その残骸に囲まれて身動きが取れなくなってしまう。
残骸の隙間から完全に復活した父親の後ろ姿とバーリーの横顔しか見れないのだ。
会わせてあげてよ!と思ったけど、この映画のタイトルを思うとこの結末も理解出来る。
タイトルの『ONWARD』を辞書で引くと、「前進」、「先に進む」という意味がヒットする。
この映画に登場するキャラクターは、全員もれなく「前進」している。
イアンはバーリーとの冒険を経て、自分の意見を堂々と言える、なりたかった自分に「前進」しているし、不死鳥の石への繋がる地図を持っているマンティコアも、自分を押し込めてやっていたレストランを畳み本来の自分に戻り、新しく店を開いて「前進」しているし、兄弟の母ローレルもエクササイズの勇者から大きな剣を持った本物の勇者に「前進」している。
「前進」とは、「停滞」している人が行う「前向きな状態変化」なのだ。
では、バーリーは?
自由気ままに、思い通りに生きているように見えているバーリーだけど、彼の心は実は幼い頃から停滞したままだった。
彼らの父親ウィルデンは、イアンが生まれる前に病気で亡くなっている。
バーリーが最後に見た父親は、病室でチューブに繋がれて弱っている姿だった。
幼かったバーリーは、その姿を怖がり、ろくにさよならも言えずに父は他界した。
それ以降彼は、何も恐れないと決めたのだ、とイアンに話す。
きっと、その時からバーリーの心は停滞していたんだと思う。
イアンは父親を知らない。
それはつまり、父親に抱く後悔も存在しないということ。
イアンに必要だったのは、この「冒険」で、おかげで彼はなりたい自分に「前進」出来た。
バーリーと冒険をして、自分の変化に気付けた時点で、イアンの「前進」は果たされてしまった。
でも、バーリーはそうじゃない。
バーリーが「前進」するためには、父親にもう一度会って、あの時怖気付いて伝えられなった想いを伝えることが必要だった。
この映画は、イアンの視点から見たバーリーのための物語だった。
だからイアンは瓦礫に囲まれて父親に会えなかったし、父親はイアンの方を振り返りもしなかった。
それはとても切なく、悲しいことだけど、イアンが父親に求めていたことは、全部バーリーが与えてくれていた。
父親の最期を見送ることが出来なかったバーリーは、そんな自分をなかったことにするために、何にも恐れないと決めたんだと思う。
でも、もうそんなことしなくてもいい。
バーリーだけは、父親に会うことでしか前進出来なかったから。
バーリーは、父親に会えたことで、ようやく「前進」出来た。
「失敗」と言われ、傷ついたとしても、恐れ知らずになるしか後悔をなかったことにする方法を知らなかった彼は、父親に再び会うことにより、ようやく停滞を抜け出し前を向くことが出来るのだ。
もちろん、イアンに感情移入しながら見ている方としては、心に小さなトゲが残るような終わり方だけど、『ONWARD』/「前進」というタイトルがこの上なく現されている物語だったなぁと思う。
ちなみにCreepy Nuts の「かつて天才だった俺たちへ」って曲がめちゃくちゃバーリーの曲だから聞いて欲しい…これエンドロールで流れたら号泣していた。
でもきっと、バーリーはイアンの物語だって言うんだろうな。
絶対にイアンを否定しないバーリーはすごく良いお兄ちゃんだったし、この映画は紛れもなくこのライトフット兄弟の物語だった。
あとバーリーの顔がほぼクリプラでたまに実写映画見てる気分になった。
他にも魔法とファンタジーの世界での現実の落とし込み方が素晴らしかったり、音楽が最高だったり、シナリオの完成度の高さに唸るような作品になってる。
ただこれピクサーかなあ〜どっちかって言うとイルミネーション作品な気がする…個人の感想です。
ディズニーアニメーションは理想を、ピクサーは理想の中にある現実を、イルミネーションは理想の皮をかぶった現実を描く会社だと思っているんだけど、『ONWARD』は理想の皮を被った現実のお話だったな…。